システム開発の見積もりは何で決まる?会社ごとに金額が違う3つの理由

システム開発の見積もりは何で決まる?会社ごとに金額が違う3つの理由

この記事の要点

  1. 01システム開発の見積もりは、作業の量(工数)と単価を掛け合わせ、まだ決まっていない部分への予備を足して決まります。
  2. 02同じ依頼でも会社ごとに金額が違うのは、作業の範囲・単価・不確かさの見込み方の3つが会社ごとに違うからです。
  3. 03要件が固まる前の見積もりは幅のある概算で、業務の詳細を確かめた後に、契約の判断に使う確定見積が出ます。
  4. 04複数社の見積もりは総額ではなく、作業の範囲・単価と体制・前提条件・使い始めた後の費用と保守・契約の形の5つをそろえて比べます。
  5. 05依頼する前に、目的・今の業務・必要な機能・予算の幅・希望の時期の5つを書き出し、予算の幅は早めに伝えると話が早く進みます。
目次
  1. システム開発の見積もりは、どう計算されているのか
  2. 会社によって金額が違うのは、なぜなのか
  3. 1. 作業の範囲が違う
  4. 2. 単価が違う
  5. 3. 不確かさの見込み方が違う
  6. 最初の見積もりに幅があるのは、なぜなのか
  7. 複数社の見積もりは、どう比べればよいのか
  8. 見積もりを依頼する前に、何を準備すればよいのか
  9. まとめ

システム開発の見積もりは、作業の量(工数)と単価を掛け合わせ、まだ決まっていない部分への予備を足して決まります。同じ依頼でも会社によって金額が大きく違うのは、「作業の範囲」「単価」「不確かさの見込み方」の3つが、会社ごとに違うからです。この記事では、見積もりの仕組みと比べ方を、私が見積もりを出す側として経験したことも交えて紹介します。

システム開発の見積もりは、どう計算されているのか

多くの見積もりは、「工数×単価」に、まだ決まっていない部分への予備を足して計算されています。

工数とは、作業にかかる量のことです。「何人が何か月働くか」で表し、1人が1か月働く量を「1人月(にんげつ)」と呼びます。単価は、その1人月あたりの金額です。予備は、要件があいまいな部分や、途中の手戻りに備えて上乗せする分です。

要素何で決まるか
工数作る範囲(工程・機能・連携・データ移行・品質の要求)
単価作業する人の役割と経験、会社の体制
予備要件がどこまで決まっているか

※ 一般的な考え方を整理したものです。ただし近年では、AIの登場により人月単位の見積り方法が見直されつつあり、成果物ベースでの見積りが増えています。

システム開発の見積もりが「工数×単価」と「予備」で組み立てられていることを示す図
見積もりは「工数×単価」に、決まっていない部分への予備を足して決まる

会社によって金額が違うのは、なぜなのか

金額の差は、主に「作業の範囲」「単価」「不確かさの見込み方」の3つから生まれます。総額だけを見ても、このどこで差がついているのかは分かりません。

1. 作業の範囲が違う

1つ目は、見積もりに含まれている作業の範囲です。同じ「顧客管理のシステム」でも、次のどこまでを含めるかで、工数は大きく変わります。

範囲の要素工数が増える例
工程要件定義や、使い始めるときの操作説明まで含める
機能と画面管理者用と利用者用で、別々の画面が要る
外部との連携会計ソフトやレジと、データを自動でやりとりする
データの移行古いExcelのデータを整えて、新しい仕組みに移す
品質の要求高いセキュリティや、多くの人の同時利用に耐える性能が要る

※ 例です。

たとえば、ある会社は要件定義から導入時の支援までを含め、別の会社は開発とテストだけを見積もっていることがあります。これだけで、金額は大きく変わります。要件定義とは、作るものが「何をできればよいか」を、発注する側と作る側で文書にして合意する工程です。工程の全体像は「DXプロジェクトの進め方|現状把握から保守運用までの全体像」で整理しています。

2. 単価が違う

2つ目は、1人月あたりの単価です。単価は、作業する人の役割や経験で変わります。設計を担当する人と、テストを担当する人とで、単価が違うこともあります。

単価は、会社の体制によっても変わります。営業・設計・開発をそれぞれ別の人が担当するのか、一人が通して担当するのかで、関わる人数が違います。作業の一部を外部の会社に出す場合は、その管理の費用が加わることもあります。単価の高さが、そのまま品質の高さを表すとは限りません。誰がどの工程を担当するのかを、あわせて確かめます。

3. 不確かさの見込み方が違う

3つ目は、まだ決まっていない部分をどう見込むかです。要件があいまいなほど、開発会社は手戻りに備えた予備を多めに見込みます。予備をどれだけ乗せるかは、会社ごとの判断です。

私が見積もりを作るときも、手戻りに備えた予備を含めています。不確かな部分を、見積もりから外すこともあります。また、中小企業DXの場合には、社内でのIT理解度・許容度・信頼度も重要視します。 不確かな部分の扱い方は、主に「予備を乗せる」か「範囲から外して別途にする」かの2つです。安く見える見積もりは、不確かな部分が「別途」に回っているだけかもしれません。

最初の見積もりに幅があるのは、なぜなのか

最初の見積もりに幅があるのは、まだ要件が固まっていないからです。そのため見積もりは、多くの場合「概算」と「確定」の2段階で出ます。

段階出る時期中身
概算見積業務の話を聞いた段階金額に幅がある。前提条件が付く
確定見積業務の詳細を確かめた後範囲と金額が決まり、契約の判断に使う

※ 一般的な流れを整理したものです。会社によっては、概算を出さずに、業務の詳細を確かめてから確定見積を出すこともあります。

私の会社では、商談を3回に分けています。1回目は、進め方のご説明です。2回目は、事前に答えていただいたヒアリングシートをもとに業務の詳細を伺い、実際の作業の画面も見せていただきます。3回目に、確かめた内容を反映した確定見積と提案をお出しします。金額を確定させるのは、業務の詳細を確かめた後です。

概算から確定見積へ、業務の詳細を確かめるほど金額の幅が狭くなっていく流れ
金額の幅は、業務の詳細を確かめるほど狭くなる

複数社の見積もりは、どう比べればよいのか

総額ではなく、次の5つをそろえてから比べます。1〜3は、「会社によって金額が違うのは、なぜなのか」で見た3つの理由に対応しています。

  1. 作業の範囲:どの工程・機能・連携を含むか。使い始めるときの操作説明や導入時の支援も含むか。何が「別途」や「一式」になっているか
  2. 単価と体制:誰が、どの工程を担当するか。外部の会社に出す作業はあるか
  3. 前提条件と変更の扱い:画面の数や利用者の数など、何を前提にしているか。途中で変えたいとき、費用がどう決まるか
  4. 使い始めた後の費用と保守:サーバー代・ライセンス料・保守の月額と、本番で使い始めた後の問い合わせや改善にどこまで対応するか
  5. 契約の形と成果物の権利:請負か準委任か。作ったプログラムの著作権などが、どちらのものになるか

基本的に、著作権の帰属先は、「創作した人(または法人)」となるため、システム開発会社側に残ります。 発注者の立場は、契約で取り決めがない場合、システムを動かして利用する「利用権(ライセンス)」を得ると捉えます。

要件が固まっていれば、完成を約束する請負が分かりやすい契約です。要件を一緒に固めていく段階では、準委任が使われることもあります。また、要件定義だけを先に契約し、その成果をもとに開発の確定見積を出してもらう方法もあります。これなら、確定見積の前に払う費用が、要件定義の分だけだと分かります。IPA(情報処理推進機構)は、改正民法に合わせて、発注者と開発会社のどちらにも偏らないモデル契約書を公開しており、工程ごとに分けて契約する考え方も示しています。

2社の見積もりを、工程・連携・保守などの項目ごとに並べて比べたスプレッドシートの画面
総額ではなく、項目ごとに「含む・含まない・別途」をそろえて比べる

見積もりを依頼する前に、何を準備すればよいのか

次の5つを書き出してから依頼すると、概算の幅が狭くなります。

  • 目的:何のためにシステムを作るのか
  • 今の業務:誰が、いつ、何をしていて、どこで困っているのか
  • 必要な機能:必ず要るものと、あると便利なものを分けたもの
  • 予算の幅:「300万円以内」のような、おおよその範囲
  • 希望の時期:いつから使い始めたいか

今の業務を書き出すときは、社員に「昨日、この業務で何をしたか」を聞くと、具体的な手間が見えてきます。聞き方は「社内DXの始め方|業務ヒアリングで社員に最初に聞くこと」で紹介しています。

5つの中で、伝えるのをためらいやすいのが予算です。しかし、予算の幅は早めに伝える方が、結果的に話が早く進みます。予算が分かれば、開発会社はその範囲の中で一番効果のある案を考えられるからです。

まとめ

システム開発の見積もりは、仕組みを知ると比べられるようになります。

  • 見積もりは、「工数×単価」に、決まっていない部分への予備を足して決まります。
  • 会社ごとに金額が違う理由は、作業の範囲・単価・不確かさの見込み方の3つです。
  • 最初は幅のある概算が出て、業務の詳細を確かめた後に確定見積が出ます。
  • 複数社の見積もりは、範囲・単価と体制・前提条件・使い始めた後の費用と保守・契約の形の5つをそろえて比べます。
  • 依頼の前に5つを書き出し、予算の幅は早めに伝えます。

まずは手元の見積書を開き、「別途」「一式」と書かれた項目に何が含まれるのかを、開発会社に聞いてみてください。

よくある質問

見積もりの金額が会社によって大きく違うのはなぜですか。

作業の範囲、単価、決まっていない部分への予備の見込み方の3つが、会社ごとに違うからです。項目ごとに「含む・含まない・別途」をそろえると、どこで差がついているかが見えてきます。

予算を先に伝えると、その金額いっぱいで見積もられませんか。

そうなることもあります。その場合も、範囲と内訳を項目ごとに確かめれば、予算に合わせて膨らませた部分は見分けられます。一方で、予算を伝えないと、予算と合わない提案にお互いの時間を使い、最後に見送りになることがあります。決まった金額でなく、おおよその幅で伝えれば十分です。

見積書に「一式」や「別途」と書かれていたら、どう確かめればよいですか。

「一式」には何が含まれるのか、「別途」は何が決まれば金額が出るのかを、開発会社に聞きます。不確かな部分が別途に回っているだけで、安く見えていることもあります。

見積もりを抑える方法はありますか。

最初に作る範囲を、効果が一番大きい機能に絞る方法があります。フェーズ1として小さく始め、使いながら次の段階を足していくと、初期の費用を抑えられます。

参考資料

  1. 民法(明治二十九年法律第八十九号)第632条・第648条の2・第656条|e-Gov法令検索
  2. 情報システム・モデル取引・契約書(第二版)|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

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山本 一成株式会社GOIT 代表取締役

2001年生まれ、21歳で起業、明治大学大学院修了(MBA)。税理士試験官報合格。Flutter/Python歴5年、kintone有資格者。バックオフィス・税理士事務所のDXに強み。業務整理・設計からシステム開発、現場導入まで、中小企業のDXを一気通貫で支援している。