相見積もりで比較すべきポイント|金額だけで決めないために

相見積もりで比較すべきポイント|金額だけで決めないために

この記事の要点

  1. 01相見積もりの総額は、会社ごとに範囲や前提が違うため、そのまま並べても正しく比べられません。
  2. 02比べられる見積もりをもらうには、全社に同じ依頼書を渡し、工程別の内訳や使い始めた後の費用まで同じ形で出してもらいます。
  3. 03比べるポイントは、見積書の中身の5つと、会社と提案の5つに分けると、漏れなく確かめられます。
  4. 041社に決めるときは、必須条件で絞り、見積もりを見る前に決めた評価表で点数をつけ、最後に5年分の総額と合わせて判断します。
  5. 05「一式」「別途」の中身や変更時の費用の決め方など、同じ質問を全社にすると、答え方の違いも比べる材料になります。
目次
  1. 相見積もりで金額だけを比べると、何が起きるのか
  2. 比べられる見積もりをもらうには、何をそろえるのか
  3. 比較すべきポイントは何か
  4. 見積書の中身で比べる5つ
  5. 会社と提案で比べる5つ
  6. 1社に決めるには、どう進めればよいのか
  7. 1. 必須の条件で絞る
  8. 2. 評価表で点数をつける
  9. 3. 5年間の総額と合わせて決める
  10. 比べる途中で、開発会社に何を聞けばよいのか
  11. まとめ

相見積もりでは、総額の安さだけで1社を選ばないことが大切です。見積書に含まれる作業の範囲や前提が会社ごとに違うため、総額をそのまま並べても、正しく比べられないからです。比べるのは、「見積書の中身」と「会社と提案」の2つです。この記事では、比べられる見積もりのもらい方と比べるポイント、1社に決めるまでの手順を紹介します。

相見積もりで金額だけを比べると、何が起きるのか

範囲の違う見積もりを比べてしまい、安く見えた会社が、後から高くつくことがあります。よくあるのは、次の3つです。

起きること例
作業の範囲が違うA社にはデータの移行と操作説明が含まれ、B社には含まれていない
「別途」に回っているB社は外部のシステムとの連携を「別途見積」にしていて、その分だけ安く見える
使い始めた後の費用が違う初期費用はB社が安いが、保守の月額はB社の方が高い

たとえば、次の2社を5年間使う前提で比べると、順位が入れ替わります。

A社B社
初期費用300万円200万円
「別途」の見込みなし80万円(データ移行)
保守の月額3万円6万円
5年間の総額480万円640万円

※ 例です。金額は架空のものです。

初期費用だけを見ればB社が100万円安いのに、5年間ではA社の方が160万円安くなります。総額を比べる前に、何が含まれていて、何年分の費用なのかをそろえる必要があります。

初期費用では安いB社が、別途の費用と保守の月額を足した5年間の総額ではA社より高くなることを示した比較図
初期費用の順位と、5年間の総額の順位は入れ替わることがある

比べられる見積もりをもらうには、何をそろえるのか

全社に同じ依頼書を渡し、同じ形で見積もりを出してもらいます。依頼の内容が会社ごとに違えば、出てくる見積もりも比べられません。

依頼書には、次の7つを書きます。1〜5は、どの会社に依頼するときも必要な情報です。6と7は、相見積もりで比べやすくするために足すものです。

書くこと内容
1. 目的何のためにシステムを作るのか
2. 今の業務誰が、いつ、何をしていて、どこで困っているのか
3. 必要な機能必ず要るものと、あると便利なものを分けたもの
4. 予算の幅「300万円以内」のような、おおよその範囲
5. 希望の時期いつから使い始めたいか
6. 前提の数字使う人数、扱うデータの量、つなぎたいシステムの名前
7. 見積書の形工程ごとの内訳、「別途」にした項目とその理由、保守の月額、5年間の総額

1〜5の書き方は、システム開発の見積もりは何で決まる?会社ごとに金額が違う3つの理由で詳しく紹介しています。

依頼するときは、相見積もりであることと、回答の締め切りを全社に同じように伝えます。締め切りがそろっていれば、検討にかけられた時間の差で、提案の質が変わることもありません。比べる手間を考えると、依頼する会社は2〜3社が目安です。

相見積もりでも、全社に同じ予算の幅を伝えておくと、金額の大きさではなく、提案の中身で比べやすくなります。

比較すべきポイントは何か

比べるポイントは、「見積書の中身」の5つと、「提案の中身」の5つに分けると、漏れなく確かめられます。見積書の中身は「何にいくら払うか」、提案は「その金額で何が得られるか」を見るものです。

見積書の中身で比べる5つ

ポイント確かめること
1. 作業の範囲どの工程・機能・連携を含むか。何が「一式」や「別途」になっているか
2. 単価と体制誰が、どの工程を担当するか。外部の会社に出す作業はあるか
3. 前提条件と変更の扱い画面の数や使う人数など、何を前提にしているか。途中で変えたいとき、費用がどう決まるか
4. 使い始めた後の費用サーバー代・ライセンス料・保守の月額。5年間でいくらになるか
5. 契約の形と成果物の権利請負か準委任か。作ったプログラムの著作権などが、どちらのものになるか

5つ目の契約の形によって、何に対して払うのかが変わります。民法では、請負は仕事の完成に対して報酬を払う契約で、準委任は事務の処理を任せる契約です。どちらの形で見積もっているかが会社ごとに違うと、同じ金額でも約束されている内容が違います。

会社と提案で比べる5つ

ポイント確かめること
1. 課題の理解依頼書の言い換えではなく、自社の業務に踏み込んだ提案か。削ってよい機能や、別のやり方の案が出ているか
2. 進め方どんな順番で進め、打ち合わせはどのくらいの頻度か。自社の側でやる作業は何か
3. 担当者窓口は誰で、実際に作るのは誰か。質問への答えは早く、分かりやすいか
4. 実績似た業種・規模の会社や、同じ道具を使った開発の経験があるか
5. 使い始めた後の支援方法操作説明や、現場に定着するまでの支援、改善の相談にどう関わるか
相見積もりで比べる10のポイントを、見積書の中身の5つと、会社と提案の5つの2列に分けて整理した図
「何にいくら払うか」と「その金額で何が得られるか」を分けて比べる

1社に決めるには、どう進めればよいのか

必須の条件で絞り、評価表で点数をつけ、最後に5年間の総額と合わせて決めます。総額と点数を同時に見ようとすると、安さに引っぱられやすくなるため、順番を分けます。

1. 必須の条件で絞る

まず、満たしていなければ選ばない条件で絞ります。

  • 予算の上限に収まるか
  • 希望の時期に使い始められるか
  • 必ず要る機能が、すべて範囲に入っているか
  • 成果物の権利など、契約の条件を受け入れられるか

2. 評価表で点数をつける

残った会社を、5つの項目で点数にします。どの項目をどれだけ重く見るかは、見積もりを受け取る前に決めておきます。受け取った後に決めると、気に入った会社が勝つように重みを変えてしまいがちです。

項目重みA社B社
課題の理解3043
進め方1534
担当者2043
実績1534
使い始めた後の支え方2042
合計(重み×点数÷5)1007462

※ 例です。点数は5点満点で、重みは自社で何を大切にするかで変えてください。

3. 5年間の総額と合わせて決める

最後に、点数と5年間の総額を並べます。点数が高く、総額も安い会社があれば、迷わずに決められます。点数の高い会社の方が総額も高いときは、その差額で何が得られるのかを、評価表の項目で説明できるかを考えます。

相見積もりの比較に使う評価表を、スプレッドシートで作った画面
重みは見積もりを受け取る前に決め、点数は複数人でつける

比べる途中で、開発会社に何を聞けばよいのか

聞くこと分かること
「一式」には、何が含まれていますか範囲が他社とそろっているか
「別途」の項目は、何が決まれば金額が出ますか後から増えそうな費用の大きさ
途中で要件が変わったとき、費用はどう決めますか変更のたびに揉めないか
実際に作るのはどなたですか。外部に出す作業はありますか提案した人と作る人が同じか
使い始めた後の問い合わせは、どこまで月額に含まれますか保守の月額で受けられる対応の範囲
作ったプログラムの権利は、どちらのものになりますか将来、別の会社に改修を頼めるか

まとめ

相見積もりは、総額の安さではなく、そろえた条件で中身を比べるものです。

  • 範囲や前提が違う見積もりは、総額を並べても比べられません。何年分の費用かもそろえます。
  • 全社に同じ依頼書を渡し、工程ごとの内訳や5年間の総額まで、同じ形で出してもらいます。
  • 比べるポイントは、見積書の中身の5つと、会社と提案の5つです。
  • 1社に決めるときは、必須の条件で絞り、事前に決めた評価表で点数をつけ、最後に総額と合わせます。
  • 同じ質問を全社にすると、答え方の違いも比べる材料になります。

よくある質問

相見積もりは何社くらいから取ればよいですか。

比べる手間を考えると、2〜3社が目安です。社数を増やすほど、依頼書の説明や質問への対応、比較の作業が増えます。

相見積もりであることは、開発会社に伝えるべきですか。

伝えます。あわせて回答の締め切りも全社に同じように伝えると、検討にかけられる時間がそろい、提案を公平に比べられます。

一番安い会社を選んではいけないのですか。

いけないわけではありません。範囲と前提をそろえ、5年間の総額で比べても安く、提案の中身も評価表で劣らなければ、選んで問題ありません。

見積もりは無料で出してもらえますか。

概算や、業務を伺ったうえでの見積もりは無料の会社が多いです。ただし、要件定義そのものが必要な規模の場合は、その作業を有償の契約として先に行うこともあります。

参考資料

  1. 民法(明治二十九年法律第八十九号)第632条・第656条|e-Gov法令検索
  2. 情報システム・モデル取引・契約書(第二版)|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

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山本 一成株式会社GOIT 代表取締役

2001年生まれ、21歳で起業、明治大学大学院修了(MBA)。税理士試験官報合格。Flutter/Python歴5年、kintone有資格者。バックオフィス・税理士事務所のDXに強み。業務整理・設計からシステム開発、現場導入まで、中小企業のDXを一気通貫で支援している。